R6-1 間伐材を有効利用して造る特徴的なRC打ち放し仕上げについて

2024年2月5日掲載建築トピックス

今回は、通常の本実杉板型枠とは一味違った、特徴的なRC造の表面仕上げについてご紹介します。

RC造の建物は鉄筋を配した型枠に生コンクリートを流し込んで造っていきますが、その型枠に使った素材の質感が表面にくっきりと映し出されます。

一般的なコンクリート打ち放し仕上げはパネコートと呼ばれる表面に塗料を塗りこんで木目を潰した合板を使います。
パネコートを使う事でコンクリートの表面はツルツルになります。

また、型枠の中に製材した杉の板を貼りこむ事で、表面に木目が浮き出たコンクリートを作ることもできます。
これが、いわゆる一般的な杉板打ち放し仕上げですが、今回ご紹介する仕上げは、綺麗に製材された杉板ではなくスギ非赤枯性溝腐病(※)の被害木等の一般的には商品価値のない木材を型枠に使い、特徴的な表面を作り上げました。

※菌により、幹が腐朽し溝状に変形してしまう木の病気

▲一般的なRC打ち放し仕上げ
▲本実杉板打ち放し仕上げ

杉板打ち放し仕上げを施工する場合、初期の打合せ時に、設計者とデザインの方向性 及び、材料や貼り方などを検討します。

今回は、全体的に縦のラインを強調しつつ、木材がもつ自然なラインをデザインに活かしたいという意向がありました。
そこで、上記のスギ非赤枯性溝腐病の被害を受けた山武杉丸太を使用し、病気で欠損した部分も含めてデザインに取り入れる事としました。

丸太をスライスした杉板の形状は均一と不均一のバランスをとる為、鋸で縦長に割いた片側は直線ラインを活かし、もう片側は天然の木肌を残して製材します。

こうして丸太を割いた杉板を間隔を空けてパネコートの型枠の内側に貼ることでコンクリート表面は縦に凸凹したリブ形状の表面になります。

溝腐病被害木の型枠への利用は前例がなく、どの様に仕上がるかは予想が出来ない為、モックアップ(原寸大サンプル)を作成して仕上がりの状態を検証しました。

モックアップは900×1800×200を計2基作成し、それぞれの表裏に計4面施工し、表面の木目の具合やリブの大きさ、深さとそれによってできる影の具合の他、養生期間の長さによる脱型時のリブの欠け具合等も検証しました。

モックアップ製作の結果、杉板の厚みは15mm、巾は150mm以内で直線の切断面を基準に200mmピッチで並べることとしました。また、杉板の脱型は型枠本体の脱型の際、同時に解体した方が、欠けが少ない事も分かりました。

モックアップはお施主様にもご確認いただき、設計者から外壁仕上げに関するコンセプト等についてご説明していただきました。

そうして、完成した建物がこちらです。

設計者がイメージしたのは修道院跡や教会の廃墟の様な、光や空間の奥行を感じられる場所だそうです。

今回ご紹介した、溝腐病被害木による杉板打ち放し仕上げですが、表面だけを切り取れば、正直なところ本実杉板打ち放しの方が均一で綺麗に見えるかもしれません。しかし、綺麗なだけでは、この雰囲気は生まれなかったと思います。

コンクリート打ち放し仕上げの自由度の高さと奥深さを改めて実感できる建物に仕上がったと感じています。